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伝統的すまいのもつ現代性に着目

民家や町屋など伝統的住宅のもつ現代性に着目。
色彩、陰影、建設方法まで踏み込んで住宅の理想像を追求します。

伝統的なすまいの現代性

学生時代、岡山県倉敷市の伝統的な町並み調査にかかわった事が端緒となって、明治時代以降の近代建築も含めその保存調査活動やその活用方策に携わる機会があり、その都度、今日の住宅に「隔たり」を感じていました。たとえば伝統的建築物には次のような点があります。

■太い柱や梁に守られた構造的な安堵感、

■木や土、紙、自然の素材に囲まれた落ち着き、

■田の字を描いたような間取で、四つの部屋を大きなワンルームにすることもできる柔軟さ。

■田の字の外側に部屋を付け足してゆける増改築の容易さ、飽きのこない長寿命の家であること。

今日、課題となっているシックハウスがない健康面、再利用可能な木造である事や温暖化防止につながる長寿命、など人間のみならず地球自身の「長寿命」にも特に優れ、現代において生かす点が多々あります。

(1)色彩について:
京都や倉敷には白壁とベンガラ塗装の織りなす美しさ、窓格子や板壁など、統一された町並みの美しさがあります。今日の新聞折り込み広告で見かける南欧風 レモンイエローやピンクの住宅もよいですが、草木や鉱物など自然界に生まれた日本の伝統色にも捨てがたいものがあります。
特にベンガラは、不思議な魅力を持つ素材です。

(2)陰影について:
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」には、伝統的建築の良さが陰影によって導かれる点にスポットが当てられていました。そ れは家が平屋で庭も広かった頃、個々の住宅も密集していない、つまり、ゆとりのあった時代の事と考える一方、ゆとりのない今だからこそ、インテリアに 奥行きも与える陰影を見直してみては?と思います。
20世紀のモダニズム建築の影響で「軒の出」のない、箱形の住宅が多くなった為でしょうか、外観にも陰影が乏しくなっています。庇や水切りなど陰影を作るものは外壁の保護部材で建物を長生きさせます。省エネの観点からも軒の出の深い陰影のある家は有効です。

(3)住宅の建て方について:
今も残る近代和風建築には「普請道楽」の檀那衆つまり建築主による建築が少なくありません。直接大工さん、左官屋さんなど職人さんに指示して自分の思い通りの住宅を建てたわけです。
CM方式で今日も可能です。業者さんに家主が個別に支払う手間はありますが、慣れれば、思い通りの家を実現しやすく、「費用」は明確で「効果」もはっきりします。


今日伝統的建物を見直す必要性を感じるのは以上の点にあります。
実際の仕事にいかに表現されているのでしょうか。
茶道の真行草の観点でみていきます。

 

- 伝統をそのままにうつした表現

- 少しくずした表現

- 全くくずした表現