増改修住宅

千葉柏T邸 (2015年竣工)

簓子下見とは外壁の板張りの一つです。

城郭の外壁にも使われ、明治大正昭和とつづき

きわめて少なくなりましたが今日でも、外壁仕上げにリクエストのある、

息の長い板張り方法です。

棹縁天井を外壁に持ってきたような形で、板が重なり合い

棹のような押し縁で板を側面から押さえます。

これにべんがらを塗ると陰影豊かになってくる、

その様子はいずれ紹介しましょう。

今回はまず玄関の土間から。

式台は欅の一枚板、床は小粒砂利の洗い出し、

那智黒でボーダーを入れています。

 

玄関ホールを座敷から見ています。

玄関は以前北側に位置し

日中日が入らぬ状態。

今回の改修によって

さんさんと日が注ぐ南側に配置し、

冬場、広々した玄関土間が

鉢植えの避難場所になっています。

 

玄関戸、柱や梁、天井板(合板ではなく杉板)

には濃い紫のべんがらが、鎌倉の家と同様に、

塗られ、ゆえに天井や梁組は豊かな陰影に満ち溢れています。

 

玄関側から入り口の門を眺めています。

門はすぐそこに見えるほど近いのですが

そのわずか路地を

楽しむ工夫がなされています。

次回は違う画像に飛ぶかもしれませんが

折に触れその工夫を紹介します。

お楽しみに!

「柏の簓子下見」

という副題ですが

柏とは千葉県柏市の事です。

簓子下見とは、外壁仕上げの一つで

幅が24センチほどの板を横に何枚も

下から張り上げてゆく。

その際、板の上下の端を鎧のように重ねてゆき

板の反りを抑えるため簓子という細い木材

で垂直方向に押さえてゆきます。

簓子は横から見ると板が重なる形状にそって

ジグザグに巧みに削り取られています。

たぶんみなさんの近所にも何十年も経ている

簓子下見の家があるかもしれません。

探してみてください。

今回の建物でこれを採用したのには理由があります。

つまり建築主の希望でした。

簓子の縦のラインや重なった板の横に走る線によって

外壁にふかい陰影が漂う、それをべんがらで

塗装するとなお一層の効果が上がる。

以前、別の家でそのことを感じた

建て主ならではの希望だと思います。

写真のように夕暮れであっても

縦横のラインは明確に出て、サイディングや塗り壁にはない

味わいを見せています。

 

ちなみに丸窓のある壁が簓子下見です。

 

今日から

べんがらの表現を「濃紫」から「黒紫」にします。

この方が実際の色を良く表現していると感じます。

 

今回の写真は玄関入口戸上の欄間です。

ブログ227をご覧いただくと

右側の壁にブルー色の丸窓がありますが

これは北欧で手に入れた「月」のアート作品です。

これを引き立てるような建築主のデザインで、

太陽を意味するそうです。

厚さ7mm、杉の一枚板をくり抜き二枚合わせて中央のガラスを入れています。

「太陽のデザイン」は塀にも刻まれています。

 

今回の写真は千葉県柏市をはなれ

かなり南に下って千葉県鴨川市へ。

法人会の研修旅行です。

館山の赤山地下壕、アーティスティックな地層

ゼロ戦のコンクリート製格納庫、地面に雌伏

懸け造りの笠森観音いずれも素晴らしかった!

でもこの

板金製簓子下見には参った!

漁港の脇にある建物なので過酷な環境にあり

板の簓子下見が板金のレインコートを着せられているのです。

その職人わざ。いつかいっしょに仕事をしたい!

 

再び玄関室内側に戻って

これは入口の扉を開けて

正面を眺めたところです。

土間の小粒砂利洗い出しから欅の式台と上り框

桧の縁甲板に

座敷の畳へと続く、硬いものからより柔らかいものに

床の素材が変化してゆくのも、和風の伝統ならでは。

細やかで繊細な感覚です。

細かな竪桟の美しい大阪格子戸の手前、

左側には何かがライトアップされているように見えます。

また座敷も左手奥にいざなうように書院の明かり障子がみえ、

どのような空間がそこに広がっているのか

ますます奥ゆかしさを感じる。

玄関の玄の意味するところです。

 

昨日の写真から

少し左奥を見ています。

改修前、手前には縁側があったので

明るすぎ、美術品を置くには適さぬ

環境でしたが、今回の改修で

像も所を得ています。

 奥の書院窓など座敷内は床脇の形状以外

改修前とプランは変わっていません。

 

実は座敷に入ると予想に反しガラッと雰囲気

が変わり

この様に船底天井になっています。

改修前の設計者の労作でここは換えず。

勾配天井の杉板と平天井の神大杉(アンティークショップで購入)

を新たに入れ替えてます。

素材のコントラストを出すため、べんがらは塗らず

杉はあえて素地っぽく柿渋塗り。

壁についても京聚楽の塗り直し。

矩折の床框は形状そのまま、材は欅に換えています。

 

今まで斜めアングルの写真が多かったので

今回は正面からとっています。

改修前の状態は

床柱は漆で面皮付、脇床の下がり壁の位置は同じだが

下に吊り押入れがあり、その下は床になって

奥の壁に障子があり外部との通風が図られていました。

 天井の神大杉部分は、葭簀天井で小さな棹で3尺ピッチで

区切られ、棹は床ざしでした。

今回の改修でより真行草の真に近い座敷にしています

 

床の間前の棹縁天井詳細です。

神大杉の板も羽重ね部分はあまり段差がなく

控えめな継ぎ目を見せています。

棹は猿頬(長方形の棹断面の下半分を60度ぐらいに面を取ったもの)

ですが、建築主の希望は本来丸竹を棹に使うことでした。

大工さんと納まりを打ち合わせ、最終的に

通常の棹を使うことになったのですが

写真をよく見ると見上げ面に白い線が入っています。

これは

竹を割いたものを埋め込んでいます。

運よく地元の材木店にありました。

 

事務所内をうろうろしていたら

壁に貼ってある木材の樹種見本に目が吸い寄せられました!

昨日のブログで紹介した天井の

「神代杉」を「神大杉」と打ってしまいました。

間違いをおわびします。

 

和室床の間を背にして

玄関側を見ています。

改修前、障子はこの様な大阪格子ではなく

縦繁の雪見障子でした。

縦繁とはブログ237の書院の障子です。

雪見とは障子の下半分が上に持ち上げられ、

外が見える、雪が深々と降る様子を温かい室内から楽しむ

風流な名前がついています。

外が見える点ではご覧のように大阪格子も共通しています。

ただ4段ある障子部分は取り外すことができ

風の通る、夏の建具になる点が異なります。

 大阪格子はオーナー調達の古建具ですが

寸法はほぼ調整なしで関東間寸法の柱間2間に入れています。

建具の名前に「大阪」が付き

実際大阪でよく使われていたことも名前の由来ですが

柱間寸法の異なる関西ではなく

関東の商家で使われていたものと思います。

 

ブログ240では大阪格子の建具を

座敷側から見ていました。

格子が縦に細く繁くなっているので玄関側は

右手の様に壁に見えます。

今まで脇からみた写真しかありませんでしたが

正面にアンティークの像を眺めています。

居間の扉を開けるとこの景色が見えます。

座敷へは玄関側から入れます。その他の入り口はありません。

設計段階で居間側からも入れる提案をしましたが、

建築主は現在の案を採用しています。

結果的にそれは良かったと今は思っています。

なぜなら、座敷が離れのように距離を置いた

特別な存在になっているからです。

壁一つ隔てているだけなのに。

出入り口の開け方でこうも違うものかと再度認識した次第です。

 

前回の写真は左手のべんがら戸位置から写しています。

和風建築の場合、特に真壁造にした場合は

柱の垂直の線と梁の水平線が白壁の中で直交します。

そのデザインがモダニズム建築と相通ずる。

正面、黒紫べんがらの小壁は

別に白漆喰でもよさそうだが、軽く浮いた

印象となり、玄関という場にそぐわない。

白ではなく黒紫だからこそ重心が下がり、和の落着いた、たたずまいになる。

梁上の壁を縁甲板の大和張りとし黒紫べんがらを塗る事もある。

黒紫壁と白壁のデザイン。

どこを黒紫とし何処を白とするか、

それが全体イメージの決手となります。

 

玄関土間から座敷を振り返ってみました。

大阪格子戸の手前、廊下部分は土間側から見ると

屋根面までの壁がへこんだ状態になり、

玄関から居間へと誘う仕掛けになります。

廊下上の天井懐を利用して、

居間のエアコンを仕込んでいます。

この画像からは見えませんが。

 

右の黒い扉が玄関に続く。

ここはリビングルーム。

庭の右手には敷地入口の門が見えます。

庭側間口は3間(5.4m)

1間のガラス戸が二か所あり真壁造でもあり

柱が4本林立し、落着かぬ印象でしたので

今回は太い梁をとばし既存の柱を抜いて

大壁としました。

最後は天井や梁、建具そして外部テラスの屋根組までべんがらを塗り

伸びやかでシンプルなデザインとしました。

以前は壁天井共に白で単調な部屋のイメージでした。

家具や絵の参加で更に重厚さと品が生まれたと思います。

 

この扉を左にスライドさせると

玄関ホールが現われます。

上部にあるのはエアコンの吹き出し口で、

グリルは黒竹。

改修前はこのように四周に框枠を廻した扉ではなく

平らな表面で凹凸の無い扉で、欅の鏡板を

擁した風格のあるものに今回、換えています。

 

気づかれたでしょうか

前回の画像を振り返っていただくと

扉の右隅に猫足の膳があります。

朝鮮の小盤(そばん)という膳です。

今はあまり使用していないようですが

酒と肴、ご飯とおかずなどいくつもの膳で食事をしたらしく、

その為軽くて持ちやすいことが製作のポイントの様です。

素材は銀杏が良いとのこと。欅や、松材のものもあります。

日本だと松より欅が重宝がられますが、韓国では逆です。

欅は木目が美しい。だがそれは見た目が綺麗な女性と同じで、

誠実さに欠ける?!と考え、それよりも素朴な

松の膳を愛したのだそうです。

以前ソウルを訪ねた時、私も購入してきました。

艶のある塗装を施して修復してある点を除けば

気に入っています。

事務所に置いてある70種類の木材見本で確認すると

木目がはっきりしていないのでどうやら銀杏の様。

酒とちょっとした肴でついつい一杯やりたくなる膳です。

画像のように夕暮れの庭でも眺めながら。

 

前回は朝鮮の膳の話で

したが、この居間の写真に戻ります。

開口部が三分の一だけ眺められるまで

障子戸を閉めた状態。

障子もこのくらい骨太だと根太天井や外の屋根垂木と

線のハーモニーが生まれます

手前のペンダントライトは松岡信夫さん作。

かなり床面近くまで下げ

文字を読むのに必要な照度を確保しています。

その他の照明は控えめにして落ち着きを出しています。

 

リビングの障子やガラス戸、網戸をすべて壁の中に収めると

この様に広がりが生まれる。

庭側に奥行き1間(1.82m)の深い軒のテラスがあること、

また障子戸を設けていることにより光と陰影の調整を図る。

壁の絵も紫外線に弱く、その意味でも障子は必要。

それより、この深い軒によって梅雨時はガラス戸を開け放していても

濡れることはない。

夏はうだるような暑さをこの軒が遮る。

かといって日差しのほしい冬に日が入らない!

ということもない。

入っているところそのうち登場します。

60坪ほどの敷地は必要だが要は計画次第。

更に小さな敷地でもこの様な軒テラスは可能だ。

陰翳礼讃を掲げるまでもなく、

 

深い軒はいいなぁ、実に!

前回と逆の方向を見ています

深い軒の文化ですね、日本は。

 

今までは

庭の眺めでしたが、

今回は居間の北側を望んでいます。

真壁の柱割が家具の幅寸法にあい

べんがら格子の建具も部屋の隅部分を引き締めています。

 

格子戸は2階や浴室トイレなど水回りに続きます。

一方キッチンは右のゲートを潜るとあらわれ、

少し見える階段を上がると

そこは食品庫。

ところでガレージが家の内側に取り込まれているのですが

そのガレージの一部を空間的に有効利用している

それ故の階段なのです。

 

居間の北と東面の写真です。

庭側の軒が奥行き2.7mと深くとも

この様に部屋の奥まで冬場は日が入ります。

右手の東面奥はキッチン、

改修してもキッチンの位置は変えていません。

直接庭に出られる勝手口がありましたが

改修後はキッチンの機能性を高めるため

省いています。

境壁の欄間は銀座の料亭解体時に入手したもの

を分けてもらいました。

 

前回とはアングルを変えて

庭側から入る

日差しの様子を見ています。

 

黒紫のべんがらで塗られた

天井や建具、柱には

少しづつ色味を換えたアンティークの家具が配されて

全体として上品なインテリアを構成しています。

 

居間の日差しの写真。

3回目になります。

2階床の木組みを現した天井越しに眺めています。

 

最近、お施主さんと一緒にテーブル材を見に

現場近くの材木店を訪れたところ

写真のテーブルに似た板材を発見。

中心が黒で周辺が黄色、「シャム柿」と店員さんは言っていたが

これもそうなのか、これほど大きな切り株

次回、柏を訪れた際

名前とともに、入手ルートを教えてもらおう。

 

キッチン入口の写真です。

左手の階段を上がれば食品庫。

右奥がキッチン。

家具は大工さんと建具屋さんの共同制作。

黒紫のべんがらを柱と同様に塗っています。

マットで鈍い艶はベンガラの特色。

落ち着いた色合いは飽きがこない。

 

キッチンと奥の水屋(食器収納)さらに奥の食品庫と続く。

食品庫は今回の改修で

ガレージの一部を有効利用しているため

4段の階段がうまれる。

日常的な昇降をバリアーと考えるか

健康のためと捉えるか、

将来

車利用の在り方とも絡む。

 

キッチンからは出窓越しに庭の景色が眺められる。

改修前もキッチンの位置は変わらず

突き当りには庭に出られる勝手口があった。

キッチン収納部はすべて黒紫ベンガラで塗装、マットな感じを出し

食洗機や、バーナー、厨芥用パンチングメタルコンテナ、フードなどの

金属質と対比させ、クラシックモダンなキッチンにしている。

 

前回写真の

手前の引き出しを開けてみた。

幅は75㎝程、雑然とはしているが

キッチン道具が一目瞭然。

 

写真は

ブログ255の奥に見える食品庫。

キッチンに入って左に位置し、居間から

内部の様子が見られてしまいそうだが

数段の階段スペースのおかげで

まったく見えない。

この食品庫、床下はガレージで

今回の改修でその一部を利用した。

食品庫の床部分が車のトランク部分と重なる。

 

前回まで紹介した食品庫は左手奥になる。

居間側からはこのように隠れて見えない。

作業場としてのキチンの照明が夜間は強く

境壁の欄間を浮き上がらせる。

居間側の落ち着きを取るため境壁にあえて

ハッチのような開口をつけていない。

 

以前、見たような格子戸ですが

そうブログ250写真の正面に見えていました。

その奥の廊下側から、同じ格子戸を見たところです。

廊下からはプライベートなゾーンになるわけですが

改修前はまったく逆で、廊下部分は

玄関ホールでした。

つまり

今回の改修で玄関の位置が北から庭のある南側

に移ったわけです。

といってもおわかり難いと思いますが

今までの「柏の黒紫べんがらブログ」から推測してみてください。

 

前回ブログの写真よりも

「廊下」

という感じが出ていると思います。

手前の天井が一段下がっているのは

改修前と同じ状態で仕上げだけ変えています。

ここは構造体が隠れていますが

あえて見せる状態ではなく

今までどおりにしています。

右手は2階への階段、その奥に見えるドアの

左手は収納室も兼ねた勝手口に

また右手は洗面化粧室に繋がります。

つまり

二つのドアのあたりが

以前は玄関ホールだったことになります。

 

階段の後方には1階のトイレが、さらに奥にはガレージがある。

道路と敷地とは1メートルほどの段差があり、

かつ、家のフレームの中にガレージを組み込んでいるので

ガレージの天井は住宅内部に中二階の床となって表れる。

写真の階段は上で右に折れ曲がって昇って行くが

折れ曲がるあたりは以前踊り場となって、そのまま奥に

ガレージ上の中二階を形成し、トイレと浴室があった。

今回の改修でもトイレの位置はほぼ変わらないが

1.2階の中間にではなく、2階レベルに設けている。

屋根は今回形状を変えてないので

トイレの天井はだいぶ屋根に近く迫ってくる。

これもガレージの存在がもたらす改修ならではの

ありようといえる。

どんな感じなのかは次回以降に。

 

階段奥のトイレといっても

前回の画像ではわかりずらいので

今回は入口のドアを開けてみたところです。

左手の階段部分を見比べても

トイレの天井高さまでは

昇り切っていないように見えます。

それがため

トイレの天井が階段下だけ低くなっています。

 

改修前は、敷地段差分を利用しトイレの床を下げ

入口手前にも階段があり

数段降りてトイレとしていました。

今回は天井が低くなっても数段の階段が

無くなる方を優先させています。

 

実は前回ブログの写真でも

見えていたのですが、トイレの奥は

この様に2階への階段裏が

便座上部の天井となって

下に張り出しています。

なるべく意識せずに済むよう

照明器具隠しの欄間をはめ

関心がそちらに行くようにしています。

ここにトイレが納まると

その他の計画条件は大変有利に解消されるので

改修時のこの際、

あえてこの出っ張りを容認しています。

 

照明器具を隠すため

洗面化粧室にも

欄間が使われています。

 

鏡に映る格子戸は廊下に面する

居間の入り口。

カウンター下には

開口部を設け

庭→居間→洗面化粧室と風が抜ける

南北の通風を図っています。

 

再び階段に戻ろう。

これは階段を少し昇り始めた写真。

下から数えて3段目のレベルに

改修前、中二階が出来ていた。

といってもなかなか分かりずらいと思うので

次回は同じ角度で見た改修前の写真を

見てもらいましょう。

手摺りは松岡信夫さん作、スチールをたたいているので

味わいは無論、凸凹があり滑りにくい。

2階床までは更に右に折れて昇って行く。

正面奥、窓のように見えるところは

改修後に2階のホールとなっている。

 

これが前回写真の改修前の姿

比較すると中二階になっており

おくに浴室があった様子がわかる。

 

左手から明かりがさしている。

前回ブログ、改修後の写真では明確ではないが

この窓は以前と変わらずに

位置している。

この奥の柱は特に歪みがひどく

平滑な面を出すのに

大工さんがねを上げていた。

柱がゆがんでいると

壁や階段の納まりに

影響してくるからである

 

前回の文章と画像があっておらず

ごめんなさい。

前回の下記の文章は

今回の写真に合わせています

 

「これが前回写真の改修前の姿

比較すると中二階になっており

おくに浴室があった様子がわかる。

 

左手から明かりがさしている。

前回ブログ、改修後の写真では明確ではないが

この窓は以前と変わらずに

位置している。

この奥の柱は特に歪みがひどく

平滑な面を出すのに

大工さんがねを上げていた。

柱がゆがんでいると

壁や階段の納まりに

影響してくるからである

 

ブログ267の画像とあわせた

コメントにします。

267では階段を上りきった正面に

この額縁ケースがあります。

近づいて見たのが今回の画像です。

昔はどのような使われ方をしていたのかは

はっきりしません。

建て主からこれをどこかに使ってくれ

と改修時に頼まれました。

 材質は欅。

中央のくり型はかわいらしいものですが

床の間の狆潜りなど同じ形のものは

歴史的建造物等、

ガラスの入っていない開口部での使用例が

見られます。

日本のもので、指物師の仕事と見受けられます。

 

前回ブログの額縁ケースが左手の壁に見えます。

2階のホール、ここからそれぞれの個室に分かれます。

中央の柱から右側は改修前

浴室があり、しかも半階分下がった位置に床があった、

それを塞いで床を張ったため

右側は天井が低く下がった形になっています。

それにしても、個室ドアや柱のベンガラ塗装は

つやを消したわびさび感覚と

鎌倉武士の質実剛健さとが生きます。

 

今まで見てきた室内から今度は

外観です。

これは北道路側からの景観。

基本的に屋根の形は改修前に比べ変わっていません。

ガレージから勝手口に至るスロープを今回新設したので

その上を覆う庇を加えました。

敷地は1メートルほど道路より高く以前は擁壁だったところを

スロープに変えています。

また屋根下の壁は黒漆喰に

外壁木部はささらこ下見に変えています。

 

前回の外観写真でのスロープ

はこのように道路に接するように設けています。

 

安定したイメージの外観となるよう

スロープ上の屋根を今回の改修で

つけていますが

車から降りて勝手口まで

雨にぬれずに行ける意味も持たせています。

 

横に杉板を張り串のような押し縁で押さえる

外壁、簓子下見のディテール

屋根は外壁板を腐りから守る役割もしています。

 

ガラス戸が勝手口入口です。

屋根が深々と勝手口廻りを覆っています。

 

道路側スロープから手摺が

手前まで回り込んでいます。

コンクリート擁壁が切れている手前は

自転車置き場。ここは改修前

入口の門扉がありました

 

手摺は松岡さんの作ですが今回は

インターホンのカバーまでお願いしています。

 

今回はインターホンのカバー写真。

前回ブログの写真を拡大すれば

入り口ドア左に見えますが、

あえてちゃんとした画像を出します。

素材は鉄板。

最初からこんなシンプルデザインの

製品があればよいのですが。

 

勝手口の内側の写真です。

防犯上、入口戸はガラス部を

最小限にしています。

下足の所在が分かるよう

開口を取り、床を明るくします。

 

271のブログでは北側の外観を紹介しました。

今回は西側です。

既存建物の改修ですので

大きくは変わっていません。

 

2階バルコニーが土庇になり、

外壁、塀、そして右端に見えている門

などが新しくなっています。

 

以前の外壁はリシン掻き落とし、

でしたが

杉板の簓子下見とし、それより上部は

黒漆喰として

渋さを強調しています。

 

前回のブログ写真から外れていた

門を正面から見ています。

右手の格子は入り口戸のもの、

閉めた時に中央に来ます。

門に限らず、塀や笠木の裏など

このように木部すべてにべんがらを塗っています。

べんがらをベースに瓦のシルバーや

金属屋根の銀黒を合わせ

全体の色彩計画を練ります。 

次回は過去のべんがら外観事例を

紹介しましょう。

番外編

過去の外観事例写真です。

これは仲町台の家。

前回ブログで柏の家の外観について

べんがらを基調として色彩計画を行う

としました。

木部のべんがらと平屋部屋根のガルバリュウム

奥の蔵座敷部の瓦屋根など

柏の家と素材は共通しています。

ただ敷地周囲の塀を、柏のように

板でめぐらすのではなく、格子にしており

格子の「レイヤー」を通して建物を見せ、

より地域に開いた外観にしています。

 

ブログ277で唯一べんがらを塗られていなかった手摺り。

その詳細画像です。

 

長さ、持ちやすさ、といい申し分なく

芸術性すら感じます。

大工さんが山に入り

見つけた枝だそうですが

入口に華を添えています。

 

庭園側から門や塀を眺めてます。

以前のブログで見てきた、建物と庭との関係性が

この様に真横から見ると、はっきりしてきます。

椅子の置かれている奥は玄関ホール、そして

右側は居間になります。

午後も遅い時間の写真ですので落ち着いた光の中で、

砂利、モルタルなどの床仕上げ、木々や植え込み

が眺められ、ブログ248と比べ、

庭が別の表情を見せています。

 

庭からの南側外観です。

雲形の肘木で支えられている肘掛窓の

位置に、改修前、バルコニーがあり、

少し洋風のテイストもあったのです。

が和風の外観にまとめるため、撤去し

土庇を設け,半身外に身を出せる肘掛窓にしたわけです。

以前の外観と比べると、屋根の割合が圧倒的に多く

和を試みるならやはり屋根に注目!ですね。

 

ブログ280の中央付近にある水盆。

太陽光が当たる様子を見ています。

撮影時期は昨年の暮れ、

冬至に近いころです。

280の撮影より遅い時間でありながら

一瞬、水盆に光が差し

水と植物が際立ち

思わずシャッターを切りました。