店舗・商業施設
大磯のギャラリー (2018年竣工)
今回紹介するのは
昨年11月、神奈川県は大磯の「宿場祭り」に際し
鎌倉設計工房展を開催したギャラリーです。
その前の「大磯うつわの日」からで、
かなり長い展示でした。
ご来場いただいたのは200名ほど。
写真は入り口から中を覗いたところ。
壁は漆喰、
白く飛んでしまい床との境目がわかりずらいが、
重い屋根面が軽々と浮いて見える
この方がシュールでいい感じ。
左手は列柱の壁、右手がギャラリー、
奥に湯沸室、その外にトイレ、
更に石倉へと続きます。
大磯のギャラリー
柱を並べてルーバーのように見せています。
このように正面からだと
景色全体が透けて見えますが
左手の歩道を行く人の見え方は
建物に近づくにつれ
最初、見えていた内部が次第に
見えにくくなり、最後は壁のように見えます。
それまで見えずらかった正面に回ると一気に
内部が見え、室内の様子がわかるわけです。
鎌倉設計工房展の開催時には
建物についてもいろいろ意見を伺いました。
中でも「カフェをここで開いてほしい!」
という要望が多く、目の前の国道一号線に面した
室内にいても、外から見えそうで見えない、
また交通量も感じさせないこの居心地
がそう感じさせたのでは!とおもいます。
写真は
昨年の鎌倉設計工房展を行った際のもの。
TVで紹介された過去の実績や
若者から高齢者までの各世代が共同生活する長屋
それに一緒に工事を行う職人さんたちの
働く姿を展示しています。
大磯「うつわの日」にちなんで奥の蔵にしまってあった
陶磁器も展示、徳利の中には頭に鶯が
ちょこんと止まっているものもあり、底にお酒がまだ残っているか?
口をもって底を振ってみると
なんと、鶯がなく!
ギャラリーのある材木店に昔からある蔵で
今回はこの蔵を意識して計画しています。
関東大震災後に建てられたそうなので100年近く年を経ていることになります。
蔵の壁の凝灰岩は経年変化でかけおち、その修復も行われました。ただ元の形の復元ではなく現状の朽ちた状態の保存固定化です。横帯状の石は部分で欠けています。それをもとに戻すのは仮にできたとしてもかなりの費用を要します。現状を一つの味としてとらえ表面が劣化せぬよう特殊工法で保存しています。画像右側が今回のギャラリーです。
蔵に続くギャラリー、その場所には以前、木造2階建ての仕舞屋がありました。
しかし材木搬入用のロングボディーのトラックが
国道から入ってくるには少し邪魔になる存在。
その後の活用もままならず、蔵とともに年を経てゆき、今回の計画となりました。
材木店の当主は、別荘地大磯にあって著名人の別荘にも材木を納入し
木材をそ此処に現した日本の伝統家屋に触れ合うことも多く、純粋の木造住宅建築が
減ってゆくことを憂う一方、道行く人に関心を持ってもらう意図がありました。
ギャラリーは材木店の入り口に位置するのでショウルームとしての性格もあり
木の柱材を格子のように扱い半透明にしています。
またデッキ部分も柱材を使い全体が木、
蔵の石壁と対比を成すよう木そのものをアピールします。
前回ブログの写真ですとギャラリーの屋根は平に見えますが、フラットルーフに見えるよう
屋根の勾配を緩くしています。
実際は平ではなく、今回の写真のように左手の蔵側は切妻屋根、道路側は寄棟の屋根になっています。
2m程の脚立に乗って、しかも隣地に入らせていただき、ようやく屋根が見える。
このギャラリーは材木店の看板も兼ねるので材木が目立つよう、屋根は副次的に扱っています。
昨日は隣地からの撮影でしたが今日は敷地内に戻り
少し離れて見上げると、このように屋根は平ですが
軒裏が見えてきます。
道路側の軒裏、特に先端部分が波打っていますが
垂木という屋根を支える木が密集しており
そのシルエットが見えてます。
柱にも垂木にも沢山の木を使い材木店をアピールします。
木材をたくさん使って材木店をアピールする、と言っても
ただ見せるだけに材木を使うのではなく、それなりの理由が必要。
一つは屋根の断熱材に関する事、
もう一つは
屋根の構造に関することです。
垂木が2重になっているのはその間に断熱材が入っている層があるから、
また軒の出が1.5m張り出しているが、2段の垂木にすることで
下の段が上の垂木を支える形になり、このように
伝統建築のイメージも醸し出しています。
大磯では例年だと10月にうつわの日、11月には宿場祭りが開催され
多くの観光客が集まる。
今年もコロナの影響を乗り越え開催を期待したい。
写真の遠方に見えるのは東海道(国道1号線)、手前の歩道はイベントの際、人でうまる。
ギャラリーのデッキには、フリーマーケットのごとく品々が並び
特にうつわの日には人々の交歓の場ともなる。
品々に高価なものはないが、昔宴会のお座敷で使った漆器、茶椀など
蔵にしまってあった品々、珍しいところでは口を振ると鳥のさえずりが聞こえる
「鳴き徳利」などがデッキに並ぶ。
ゲートを開ければギャラリーは歩道と一体になり自由な往来が生まれ
まちに開いたスペースとなっている。
中央の植え込みを挟んで入口は国道に面しているので騒音もありコンクリートの塀を設けたいところですが、植栽を施し開放しています。特に歩道側はお年寄りが縁に腰掛けられるよう高さを調整しています。奥の隣家は駐車場だが左奥に樹木が茂りさらに奥は歩道に面して生け垣の日本家屋、と旧東海道にふさわしい景観を作っています。
写真は国道側から見たギャラリーの全景です。
画面中央当たりの隣地樹木と奥の山の緑が重なり、
緑の景観の中に家がところどころ顔を出し、
ギャラリー前の植え込みは歩行者の休憩ベンチにもなる。
前回ブログの写真でよくわかるのだけれど
本来デッキと植込みとに段差を設け、
子供が足をぶらぶらさせてデッキに座る配慮を
したつもりだが、植え込みのおかめ笹は大分茂ってきた。
一般的には植込みコンクリートの立上がりは
デッキと離して設けるかもしれないがここでは、
立ち上がりをデッキ下に食い込ませている。
デッキの延長がおかめ笹!となり
このような、自然な、素材の変化も好ましい。