新築住宅

東京町田S邸  (2017年竣工) ③

浴室の窓を外から眺めたところです。

リビングから次第に雁行して

屋根が下がってゆき浴室窓の外で

最も低くなります。

高さは地上から1.9m。

1.5mの高さに抑えた事例は

鎌倉の家と伊豆高原赤沢の家とがありますが

いずれも浴室から外を眺める

ケースで、屋根を低く抑えています。

自分の姿は外から見えづらく

内側からは外の景色が手に取るように見える

工夫があると落ち着いたスペースになります。

 

 

リビングの外観写真ですが

左手奥に浴室の袖壁(赤べんがら)が見えます。

前回の説明のごとく

軒先が低くなっている様子が見て取れます。

手前の緑を透かして玄関ホールのガラス面も

右手に見えています。

 

 

季節外れの写真です。

右手に出窓に続く浴室の袖壁が見えます。

紅葉真っ盛りの裏山で向かいの山並みも遠望してます。

 

 

ー2階への階段位置についてー

子供たちが学校から帰ってくると

玄関扉が開いた音がし、声が聞こえ

ダイニングへの階段(右手前奥)を上がる時、

姿が見え、声をかけ、そのまま2階子供室

への階段を上ってゆく、

そのプロセスがすべて見えるところに

キッチンを位置させています。

写真の階段の1段目は薪ストーブが置かれた

ステージで、子供たちには

自由に座れるベンチの役割もしています。

 

 

2階への階段を正面に見てます。

右端に見えるのは玄関硝子戸。

玄関から1階床に上がるには70㎝ほどのレベル差があり

硝子戸の上部しか見えない。

右の赤壁があるため、玄関に立つ人は

背が高くないと直接ダイニングが見通せない

手前のステージにはまだ薪ストーブが置かれていないが

煙突のためもあって、このように2階に吹き抜けている

右上の黒竹部は踊り場ライブラリーのベンチ。

天井面に三角に開けたガラスからは

2階の屋根の軒裏が透かして見える。

 

 

1階フロアから階段踊り場まで

段数にして8段、通常その下の階では天井高さが詰まり

人が立てぬが、この場合、階下は玄関ホール(赤べんがら壁の裏側)で

1階フロアより土間まで、さらに4段下がるので

この不都合は起こらない。

8段ぐらいでフロアがスキップして踊り場フロアの様子も

このように眺められると、階段のスペースそのものが

豊かになり、手前のダイニングや2階の客間まで

その豊かさが広がって来る。

 

 

階段の踊り場が広く

ライブラリーになっている。

3.6mのカウンタ―テーブルや本棚のほかに

長さ1.8mのベンチがある。

10段目の板がそのままベンチになっている。

よく見ると

補強用吊りボルトの頭が見えるかもしれない。

 

 

2階から1階玄関ホールや薪ストーブを見降ろしています。

特に玄関ホールから1階フロアまで、数段の階段があり

またべんがらの赤壁があることで

柔らかく玄関ホールを間仕切っています。

 

赤壁の下は空洞で

薪置き場として利用できるよう

ストーブの床を張り出しています。

 

 

前回は1階玄関ホールと階段踊り場ベンチとの

位置関係について、見てみました。

今回は少し、斜めの角度で踊り場を見ています。

踊り場ライブラリーからは画像右下にある、

数段の階段を経て(ブログ459参照)2階になります。

踊り場は南に面し、深い軒でおおわれ、窓からは

向かいの山の気配、鳥のさえずりを感じ、

また1階と2階、双方の風の取り入れ口として、

役割をはたしています。

 そのため、ベンチの背あて部分は竹の格子ですし

踊り場から2階への階段は透かしています。

 

 

階段踊り場のライブラリーから

田園風景の続く東側を見ています。

ところで

金色の照明器具が気になります。

木や漆喰など自然素材の中にあって

金属は素材感が異なり、その美しさが際立ちます。

また

陰影の空間の中で鈍び色に光る金色は

特に引き立ちます。

 

谷崎潤一郎の「陰影礼賛」の中にも

光の乏しい奥座敷の中までかすかに届いた光を

金屏風が反射する様を描いたくだりがあります。

今回は少し明るすぎますが、

ついそれと重ね合わせ、

陰影の魅力に思いを馳せてしまいます。

 

 

前回ブログ写真の左下に写っていた手摺です。

手摺自体は木製、で周囲と合わせべんがら塗装を施していますが

それに合う壁付けブラケットと手摺端部のエンドを

亜鉛ダイキャスト(鋳物)の製品を使っています。(KAWAJUN)

 

薪ストーブが鉄で重厚感のある素材。

そのわきに見えてくる階段部材も小さいけれどそれなりの重量を持ち

しっかりした

素材感のものを使っています。

 

 

右手にあるのがベンチだが板がそのまま奥に伸び

階段の10段目になっている。

その下の9段目は床の一部になり、

ここにも座って本を読む。

ベンチの背あて部分は黒竹、頭の部分を太い梁で

受けている。構造上は細身の梁で十分だが

下から見た時の柱や梁の構造的美しさを

意識し、あえて太いものにしている。

右上の三角窓からは得体のしれない光景が広がり

2階への興味を誘う。(実は見えるはずのない

屋根の軒裏)

 

 

2階への階段の画像です。

写真だと2階まで、随分距離があるように見えるが

最後の段まで1メートルほどの距離。

踊り場からの風が1階に通るよう

蹴込板をなくしています。

子供たちも下の様子をのぞき込むかもしれない。

 

段板は通常ササラ桁という厚板で受けるが

ここは壁や側板のJパネルに差し込んで

支持しています。

 

 

2階から階段踊り場方向を見ています。

踊り場は1.2階の中間レベルにあるので

開口部は双方に光と風をもたらします。

このように2階に上がると

464ブログで「見えるはずのない」と書いた

軒裏が

三角窓を介して見えています。

ではここから見えるのは

天候や向かいの山々、遠くの田園地帯

実は屋根が浮いた印象にするため

現場でもう一つ下の段にも

壁に三角窓を創ることも考えました。

結果は一つでよかったと思います。

塞ぐところは塞いで

落ち着きを取ることも大切だと思います。

 

 

前回の写真撮影位置を変えずに

低い目線で撮った画像です。

 

外光が室内に入ると

反射した光が天井や壁を照らします。

手前の腰壁は杉Jパネルにべんがらを塗装していますが

見事に杢目の表情が現れています。

また天井の野地板はラーチ合板でありながらべんがらを塗ると

銘木の風格さえあります。

べんがらを塗ると暗くなるといいますが、実際は開口部が大きい

,いたる所から光が入る、などの理由で

懸念されていた方もこのままでよい、とその良さを再認識します。

落ち着くといわれることもしばしばで、べんがらは不思議な素材です。

明るい白壁があり、べんがら塗りの陰影溢れる部分もある、

哲学的に考え、山あり谷ありの人生をそこに重ねると

双方が同居するところに落ち着きを感じるのではないでしょうか。

 

 

階段踊り場ライブラリーは部分写真が多かったと思い

今回は特にベンチと隣接する階段の入った写真を載せます。

ベンチの座面が10段目の階段ともなっている様子が

この画像ならわかりやすいのかと思います。

 

 

踊り場のベンチ。

今日は夜間の写真です。

黒竹を詰めて打ちつけた格子から光が漏れて

芸術的な照明になります。

昼間は風が通る竹と竹の隙間

しかもすべて異なる幅の隙間によって

「綾取り」のような模様が

浮かび上がります。

 

 

前回はベンチの背あての部分の

光でしたが

今回はベンチとなっている階段10段目

そして9段目、さらに踊り場の床面に

1階の光が入る様子です。

このように夜間はライティングによって

別の世界が広がります。

 

 

2階、階段ホールの写真です。

右手が階段室。

 

広々としたワンルームですが

子供部屋や客間としての使用が可能なように

ホール全体を間仕切ることができます。

 

 

2階ホールの間仕切りですが

まず

この建具の入ったラインで区切ります。

建具上部に梁が通っているので

わかりやすいのでは。

大きく建具から「向こう」と「こちら」

に仕切ります。

写真には襖が1枚しか入っていませんが

個々には3枚入り一番右端の襖

が手前の部屋への入り口になります

 

 

奥の客間を襖で囲った状態です。

手前の部屋へは

右端の出入り口からとなります。

ブログ471の写真と比べていただければ

空間の開放度がはっきりしてきます。

 

 

今回は間仕切られた客間に入ってみました。

その時の画像です。

建具は普段は収納されており

必要な時に出してきます。

 

 

写真の3枚の襖が

左手の壁に引き込まれ全面開放すると

奥に階段室が現れる。

近くで見ると

襖には花柄の文様が!

 

 

再び間仕切りの襖を取り払い

区切られていた全体を見ています。

 

中央、窓寄りにはトイレ

さらにその上は小屋裏の物置で

素木の手すりが回ります。

 

左上の梁には

間仕切り用の襖を立て込む

溝が彫り込まれています。

 

 

前回写真の奥になる個室です。

 

白壁の上のべんがら塗装部は

針葉樹合板の目地を黒竹で埋めています。

 

 

昨日と同じような写真で恐縮ですが

昨日が西面で今回は南面です。

窓からやはり向かいの山が眺められます。

 

濃紫のべんがらで天井を塗るのは

落ち着きと創造力を育むため。

 

 

 

写真は客間の北面をみています。

春夏秋冬の自然の有様を眺める為の格子状窓と

白壁を穿った通気窓に分けています。

ピクチャーウインドウのプロポーションを整えるとともに

カウンターの採光にも配慮。

 

左右の白壁の上部には小屋裏物置の

手摺が薄らと見えています。

 

 

客間の今回は東面を望んでおり

左手が山側の格子窓になります。

客間だが多目的に使う。

お父さんの書斎や趣味の部屋として

また子供部屋になるかもしれない。

この家で

閉じているのは寝室と浴室洗面トイレ

ぐらい、あとは大きな一続きの部屋。

 

 

北側の山の様子を

まじかに見てみました。

1階からは野ばらが見えますが

2階からは竹やクヌギの木が多かったと思います。

 

 

今までは室内からの裏山が映って

いました。

今回は実際に山に入って奥の住宅を見ます。

写真で見るように、実は住宅地の中に

この家はあります。

 

 

「四神相応の地に建てる」の紹介も今回で

終了となります。

100回ほど今回は続けたわけですが

一瞬の動画と異なり

1枚の静止した写真からは読み取れるものが数多くあります。

振り返ると夜の写真がほぼなく、したがい今回は夜景を取り上げます。

完成間際の玄関ホールを見ています。

よく見るとまだ外壁周りには養生シートがあり、

玄関先には職人さんのスニーカーもみえます。

庭や裏山の光景と室内相互、視線の変化に富むこの家を

象徴しているのが玄関からリビングダイニングにあがる

この数段のステプ、かなと思います。

曲で言えばイントロの役割も持っています。