新築住宅

東京町田S邸  (2017年竣工) ②

前回ブログの写真は室内からでしたが

今回は外に出て山側から写しています。

ここからですと「カウンターの足」のみならず

ダイニングから階段室やリビング方向の様子も見て取れます。

ちなみに、前回も写っていた右端の明かりはトイレの窓

ですが硝子の反射がありません。

じつはトイレの照明は外部の軒天井に設置されています。

いわば内部と外部の中間、縁側のようなところにつけてある。

外灯でもあり室内灯でもある、どのように室内に取り込まれているのかは

そのうち写真で説明しますがヒントは昔のトイレ。

昭和の家を訪れると、縁側の突き当りにトイレがあり、

しかも男性用の小便器が手前にあって、奥が大便器になっている。

相互は杉の板戸などで区切られているが、壁の上部の一部が刳り貫いてあって

そこに裸電球が取り付き、双方に明かりを供給するのを見かけます。

子供のころの我が家にもあり、その後、登録文化財建物に訪れても

遭遇し、不思議に魅力的なのです。

今回はトイレ自体が魅力的になるのに一役買っています。

 

写真は前回ブログの撮影位置から少しトイレ側に近づき

、空を見上げています。

トイレの屋根軒先は左手に伸び、さらにL字型に折れて

ダイニング側の小庇に繋がる様子が見えます。

よく見ると

L字型に折れている変換点は緩くカーブを描いています。

直角で繋がっていてもよいのですが

ご覧のように他の角々が皆、鋭利に角を出しています。

ダイニングの室内側からこの部分を見る機会もあるので

あえて目に優しく曲線を描いています。

板金職人の腕の見せ所でした。

 画像として全体が暗めですが、

人の目にはもっと明るく、カーブも目立ちます。

 

ガラスに山の緑が映るように2階客間からは

山に生息するタヌキが眺められます。

格子は木製で、その上にガルバリュウム鋼板を

巻き耐候性を向上させています。

プレーンな素材感ですが

外壁のガルバリュウム小波鋼板の陰影ある表情と

対比を成し、モダンでありながら侘び錆び感も

あり、まことにいいですねー!

 

 

前回ブログでは、建物と角度のついた写真でした。

今回は平行に撮っていますので

2階の窓の様子や1階の軒先ラインが直角に

繋がっている様子などが見て取れます。

 

新緑の時期になると

このように裏山の樹木が生い茂ります。

こちら側は北で、

2階の客間やその下のダイニングスペースでは

夏は格別涼しく過ごし易すそう。

 

 

トイレの紹介の前に

リビングについて一言。

外壁もそうなのですが、今回は

赤系(壁、軒裏)と濃紫系(天井、腰壁)のべんがらを使って

木の部分を塗っています。

床も杉板に小上がりの畳、それに障子の和紙が加わり

豊かな素材たちに囲まれたインテリアになっています。

隣家からの視線を避けて、普段は障子は占めたまま、

実際は南からの光が強すぎ、柔らげる為の障子でもあります。

 

 

前回ブログの写真と同じ?

ではなく、左手の閉まっていた障子が

今回は開いています。

南側にも庇が廻り、その軒裏が見えています。

障子をこのように片側に寄せると

その下のガラスの効果か、軽快さとともに

宙に浮くよう、みえています。

 

 

実際リビングから見える外の景色とは?

 

今までは室内重視の写真で外が薄く霞んでいました。

 

今回は外と部屋の明るさの差が少ない夕方の

写真です。

 

夏に向かって、これからの季節、

日が沈んでも

まだ薄明るい

時間が長くなってゆきます。

その光の移ろいを嗜む季節に

そろそろ

近づいてきます!

 

 

写真はリビングの畳コーナーから南側の障子を見ています。

障子の桟はシンプルなもので竪残は2本の吹寄せ、横は1本、

と最低限の組子、にしています。

横長の桝型で構成される細かく分割された組子が

本来の障子のイメージです。

床から天井までの要素つまり

障子+腰板べんがら塗装+小窓の嵌殺しのガラス

で一つの壁面として構成し、あえて

重たくなる細かな桟を使用しませんでした。

 

 この家は夕日が美しく見える事が主要なテーマであり、

このように左手玄関や薪ストーブスペースの奥まで

夕日が入る。

そして白壁には森の樹影も映し出されます。

 

 

久し振りに外観写真です。

前回ブログでリビングの南側の室内写真を載せました。

障子を開閉して、その様子を見ていただき、

周辺の外の景色を紹介したわけですが

今回は障子窓を外から眺めた写真です。

腰壁は白の艶消しガルバリュウム鋼板

でしっくい風に見せ、

左手のガラス小窓+障子を加え

一つの「まど」としての表現になっています。

 

 

写真はリビングの畳コーナーで

窓ガラス側の板敷部にスピーカー端子(白いプレート)

を組み込み

此処にスピーカーを置きます。

ではアンプや、CDなどはどこに?

 

 

アンプやCDを入れる棚は

左上の壁の中

べんがらの塗り壁の一部がその収納になっています。

壁の向こう側にも部屋があるので設計の段階で

此処にスペースを確保しました。

天井に近く高めの場所ではあるけれど

畳床が上がっているので

使用上は差し支えありません。

 

 

前回の続きです。

 

実際の収納はこのようにお使いです。

スピーカーも置いてあるだけで

コードは見えません。

 

 

赤いべんがら壁

板の張り方は凹凸をつける大和張りという仕上げ構法です。

板そのものは「木摺板」で

外壁のモルタル塗りの下地材として使われます。

つまり下地材なのですがプレーナーをかけてべんがらを塗装すると

このように杢目も現れ奇麗な壁に仕上がります。

この木摺り板は丸太の中央から四角い柱材を取った

周囲の辺材を用いるわけですが

廃棄物として処理されがちな部分を有効活用することで

林業の継続にも寄与しています。

 

 

大和張りの畳とのおさまりです。

壁そのものに凸凹があるので

両方の板を受けるだけの幅が畳寄に要求されます。

此処は奥行きが30で張り出してる板と畳が接近し

あまりゆとりは取らない納まりにしています。

するとへっこんだ部分に赤ではなく濃紫色の

べんがらが顔をのぞかせています。

来客も説明しないと分からない?

 

 

写真はべんがら赤壁を見上げたところです。

梁とのおさまりも凸部と梁の出が同じ面で

仕上げています。

板は木表側(年輪の外側)にそるので、

境目にラインの暴れができぬよう

確認しながら板を張ってゆきます。

 

 

山に近く湿気が多いので

通常の建物よりも大分基礎の高さを高く取っています。

畳の部分は板床からさらに高くなるので

収納力は十分。このように利用しています。

 写真の壁際を見ると納まりが見て取れますが

板で構成されている赤壁のはずが

全て板ではなく柱が一部に混ざっていることがわかります。

前回の梁を見上げた画像で

上部の梁相互が直角に交差している部位の

赤壁が板ではなく柱になっています。

そういえばほんの僅か、板の幅が違いますね。

 

 

前回ブログと同じくリビングの南側の障子を見ています。

今までも時々現れた画像です。

正面の障子の下に小窓があります。

奥の柱にとりついているため

構造的柱に必要なホールダウン金物が取り付いています。

地震や台風の際、柱が土台から引き抜かれぬよう固定する金物

ですが普通、そのまま見えてきます。

此処では黒竹をその周囲に巻き付け自然な意匠としています。

 

 

もう一度リビングの南側正面を見ています。

前回のホールダウン金物取付部位を

ご覧ください、

竹で巻いているので、ガラス小窓の縁のライン

右側が少し歪んでいます。

今までのブログで

竹の使用はエアコンの収納部、階段室のベンチ

など紹介しましたが

他にも使用事例がありますので

楽しみにしてください。

 

 

ブログ430の画像をご覧いただきます。

正面赤べんがら壁の裏側が今回の写真になります。

左手前は洗面化粧室の入口、素木の引き戸引手部分が見えます。

正面から左手にかけて黒っぽい腰壁は何か意味があるのだろうか?

この部分430でも気づかれた方もいらっしゃると思いますが

左手に裏山があり比較的近くまで建物が接近しています。

すると山が崩れても家が崩壊しないように

山の影響範囲をコンクリートの壁にする必要があります。

山に近い壁であるほど高いところまで。

左奥のトイレはより山に近いので

北側の壁ほぼ全面がコンクリートでできています。

この写真の壁は少し離れますが、まだコンクリート壁の立ち上がりが必要です。

そうです、答)ここはコンクリート壁だからです。

木造の壁より厚みがありこのように室内側に張り出してきますので

その部分を黒べんがら壁で覆っているわけです。

次に天井に注目すると三角形上の段差ができています。

これは何のためにですが、、、、

 

 

前回ブログの天井の件です。

見ればこの通り、つまり

2階からの設備配管上どうしても天井の懐が

必要なので廊下側の天井は低い。

そのまま天井を貼ると

廊下の入り口上に、その低い天井が現れ

梁下に15センチほどの天井下がりが見えてきます。

ディテールの工夫をすれば

それでもまんざら悪くはないのですが、

この場合はそれを避けています。

 

赤べんがら壁や開口部の高さを梁下で揃え

梁が交差するラインを揃えることで

梁下に合わせた伸びやかな空間を選択しています。

従い左手奥から現れる廊下の天井は

奥のスリット状の窓手前で止め、

窓から手前の天井の高さは梁の下端に合わせ

入口上の梁の下には何もつかないデザインとしています。

 

 

前回339ブログとほぼ同じアングルの写真。

はて?どこが違う。

、、、

そう、手前の柱が濃紫から赤べんがらに変わっている。

完成後にお施主さんが自身で塗り替えたようだ!

完成時

ここは柱なので柱として見せる事にこだわっていたが

壁の赤べんがらと同色にすることで

柱を壁に取り込み、壁と天井とを明確に分けている。

結果を見てみると、この方が良かった。

内外の連続感も高まっている、

連休中に久しぶりに訪れ、そう感じた。

ところで実はもう一か所

気が付いたところがある。

 

 

前回の続きです。

気が付いたところの写真。

天井です。

廊下側の天井は2階配管を交わすために

下がっていると説明しましたが、

この下がり部をよく見ると

水平の天井板先端が立下がり部より

15ミリほど突き出していた!

のです。こんな細かいことよくやったなぁ

とスタッフに訪ねると、

「所長は何度もそうするように

念押ししていましたよ!」

30年前とか若いころ設計した建物を訪れて

その時の自分自身に感心することがあるが

今回はまだ完成して間もないのにもう忘れていた!

 

設計段階では気が付かぬことを

現場で修正することはよくある。

ここも下がり天井をどうやって消すか、、に

関心を寄せていたと思う。

もし15mm突き出していなければ、立下り部が脇の窓の光を浴びて

鮮明になり下り天井があらわになる。

天井もべんがらで濃く塗り、窓の手前で止めて

段差の存在を消す。

 

 

いよいよトイレです。

前回ブログの左端にトイレの引き戸端部が見えます。

開けるとこんな風に

前々回でも触れましたが、濃紫色の腰壁は構造が

コンクリートになっています。

右手のカウンタ―下部

は収納で開け閉めは吊り引き戸、収納部よりも

10㎝ほど余分に出して、引き代とのバランスを取ります。

カウンター上の内出窓は照明ボックスで

室内と裏庭にまたがり、内外を明るく照らします。

 

 

内出窓に近づいた画像を紹介します。

照明はダウンライトでそのまま下の

グリーンを照らします。

内出窓外の壁は内側の漆喰壁の延長で

白くして内外一体化するとともに

光の反射板の役目もしています。

向かって右の窓が開閉可能で、

山の冷気を呼び込み

夏はここ、過ごしやすいかもしれません。

外の軒下に山の緑も広がります。

 

 

トイレの内出窓を外から見ています。

廻りの豊かな緑が目に入りますが

今まで見てきたように

実はリビングからも大いに眺める、つまり

リビングからはトイレの窓が丸見え!

なわけです。

内出窓にせず、直接壁に窓が付いていて

窓を開ける際、リビングにいる人と顔があって

やあ!こんにちわ!でもよい。

が、ここは

美しく、少なくとも何か物語があるように!

 

 内出窓にすれば、

窓を開けても顔が合うこともなく

内出窓全体が照明ボックスにも見え

実際内側からも行燈のように見えるので

「窓」の感覚が薄れます。

トイレ窓からは裏手全体が見渡せ

荒々しい岩盤の光景や

野ばらがしだれ咲く様子を日表から眺めます。

 

 小さな部屋ですが

自然との触れ合いが生まれると

意識も広がってゆきます。

昔の厠のように!

 

 

前回ブログの補足です。

内側のガラスには外の照明やその反射が映り

このようにトイレに人がいても

外から見えない。

 

トイレからはこのように正面の野ばらや

岩盤の様子が見えるだけである。

 

 

トイレの入り口前から洗面所と奥の浴室を見ています。

画像からは見えませんが左手に洗濯機スペースがあり

その上部は隣室のリビングから収納として使います。

これについては、リビング紹介の際、コメントしたので

覚えている方もいらっしゃると思います。

浴室とは山側の壁を少し壁をずらして隙間に小窓を設置し

通風を確保します。(正面の小窓がそれです)

浴室とはガラス扉で区切り、

奥ゆかしさを持たせ空間の広がりを得ています。

壁は板張りで赤のべんがらで塗装し、キッチン同様

カウンター収納部も同色で仕上げ、統一感を持たせます。

天井は濃紫色のべんがらで塗装しており、

全体が洞窟のように

外部が見えても包まれたような安心感を意図しています。

 

 

洗面脱衣室を浴室側から見ています。

入口の引き戸は壁の中に収納されて

素木の引手が顔を出しています。

リビングからの光で廊下の奥は

明るく、距離がある様に見えるせいか

何となくここは「旅館の離れの一室」

にも見えます。

 

 

今回は浴室内から洗面脱衣室を見ています。

床や腰壁に張った十和田石の若草色とべんがらの

赤とがモダンな侘び錆び感を醸し出しています。

文化財級の住宅を訪ねると浴室の天井は雨傘のように骨の垂木が

天井の中心に集まる唐笠天井だったり

中央に四角の木の換気口を取り、それに向かって東西南北から

寄棟の網代天井が昇って行ったり、昔から浴室の天井は凝っていました。

とっぷりと湯船につかり、一日の疲れを癒す場所としての浴室。

現代的な工夫もまだまだ、いろいろ出てきそうです。

 

 

前回ブログ写真の右手方向を見ています。

この角度ですと

洗濯機の位置など洗面脱衣室内の様子も

わかります。

腰壁の十和田石とべんがらの板張り部分、

特に入口上は大工、担当スタッフ交え、

納まりに苦労したところです。

べんがらは防水性があるので

このように湿気の多い浴室にも使います。

無論、湿気が板の隙間から入っても

大丈夫な下地の処理も行っています。

 

 

浴槽の写真は今までのブログで

ちらほら見えていましたが

今日はやや正面からの写真です。

天井は奥の出窓まで伸びています。

湯気で天井に水滴がついても

天井なりに落ちてゆき

サッシの手前で

下に落ちるようにしています。

 

外からは中が見えにくいよう

右手に袖壁をつけたり、

窓を小さめに抑えたりしていますが

湯船につかって見えるのは

無論、まじかに迫る山の緑です。

 

 

浴室の窓からの写真です。

「湯船につかった」時は視点が低くなり

更に山の中腹まで見え

別荘感覚を味わえる時を過ごします。

 

 

前回に続き

浴槽からの眺めで

更に低い位置から見ています。

前回より屋根はさらに深く覆い

山際のラインや遠くの山も薄っすら

見えてきます。

今回はガラスが4面見え

左端は開閉でき

家全体の通風に役立っています。