新築住宅

神奈川厚木H邸 (2010年竣工)

久しぶりに訪れますとすっかり、
リゾート地インドネシアのバリ島のイメージでした。

外観はバリではなく和のモダニズム。

ですが、
京都の俵屋を参考にしたバリのアマンダリをはじめ
和のイメージはバリの多くのホテルでも見受けられます。

画像のベンガラ塗装を施された格子部分は全面ガラス。

しかしこのように斜めにみるとガラスがまったく感じられません。

あたかも壁のようです。

小間返しという、
幅3cmの角材を同じく3cm間を空けて連続させると
このように壁のような格子面が出来上がります。

左端にちょっとガラス面が見えてますね。

 

近くに寄った画像です。

京都の町屋をはじめ伝統的な建築物には必ずある格子。

このように連続させて壁のような扱いにするとモダンなイメージに。

正面で見たときの軽快さとは裏腹に
横から見るとこのように重厚感さえ現します。

格子の追及は今後も続きます。

 

玄関室内の画像です。

前回の外部写真格子の壁のようになっていましたが
このように室内から見ると
壁のイメージはまったくありません。

明るく軽快です。大きな格子戸が玄関戸、木製の格子戸です。

正面にはシューズクロゼットと
その上は小荷物の受け取り扉がついています。

壁は漆喰、木部はべんがら、床は土間になっており
廊下の延長にスノコを配し大谷石にて仕上げています。

 

前回同様、玄関ホールを角度を振ってみています。

中央格子戸は玄関戸。

右に座敷、靴脱ぎ石とベンガラの腰周りが

屋内の「離れ」のように感じさせ、
なんとなく旅館の玄関?の気配です。

栃木県壬生の現場では
地元大谷石をサンルームの床に使用して以来
ベンガラとの相性に魅かれ機会あるごとに使っています。

 

あまり細かくは間仕切らず、
水回りを除き大きなワンルーム的な厚木の家ですが
左奥、玄関土間脇の座敷のみ、小さく区切ります。

黄色の天井部分は竹で出来ており、
前回画像の高窓の光をもらい、
ほの明るく光の織り成すスペースになっています。

この玄関もそうですが、インテリアを眺める時、
オーナーが生活を楽しんでいらっしゃる様子が伺えます。

 

左の飾り棚や正面のタペストリーは
今までの画像に登場しているので
方向がイメージできると思いますが
これは玄関土間脇の座敷に座って見た光景です。

大きな片流れの屋根形状を持つ厚木の家では
画像右側ガラス部分が最高の天井高を持ちます。

玄関ホール部分のみでは、
そのおおらかな屋根形状が登場してきません。

左手、上部の半透明ガラスや
座敷上部の透ける天井空間などが加わって
光のトーンで陰影をつけ
リビングダイニングにその効果を表します。

 

前回画像を玄関土間に隣接する座敷から眺めたところです。

この座敷、天井をご覧いただきたい。

実は竹でできています。

しかもほんのわずか透いていて隙間から光が入ってきます。

直接の窓のない部屋ですが、天井全体があかるく光る。

川崎の日本民家園を訪れますと、
床が竹でできている農家があります。

足が落ちないよう竹を詰めて並べていますが、
竹自体が直線ではなく節もあるので
どうしても隙間ができます。

夏はひんやりとした空気がその隙間から上がってきて
昼寝にはもってこいの場所となります。

この厚木の家でもこの天井裏側は2階の床ですので
多少のごつごつ感さえ我慢すれば?
そんな芸当もできるわけです。

子猫がたくさんいるので
遊び場になっているのでしょうけれど。

 

前回の画像では天井から光が入ってくる様子が
あまりはっきりしない印象です。

今回はこの画像にしてみました。

竹を詰めて打つと暗くなる?と思うかもしれませんが
実際はこの通り隙間が膨らむように光が入ってきます。

特にこの天井は梁で九つの枡に分割され
各々隣り合う枡で竹の打ち方を
市松模様になるように90度方向を変えています。

愛知県犬山市の名鉄ホテル脇に有楽苑という庭園があり
この中に如庵という茶室があります。

織田有楽斎が建てた茶室で国宝です。

竹を詰めてうった有楽窓があり
光の透け具合に感動しヒントを得て
市松の天井としました。

光の入り方も季節によっても異なり、
夏は上部窓から直射光が入り

竹の曲面に反射して光が飛び散る様はさぞやと思います。

 

4畳半の座敷。

竹の天井について話してきましたが
これは全体を写した画像です。

竹を敷いている方向の違いが良く分かるのではと思います。

4畳半の畳の線にあわせ2階部分の構造材を組んだ
格天井(ごうてんじょう)としています。

JR横浜駅近く、線路際に水天宮平沼神社、神楽殿があります。

もう10年以上前の設計ですがここの神楽殿の天井は
もっと細めの化粧角材で格子状に仕上げています。

この場合光が入ってくるのではなく神楽の音が響くよう、
天井を板で塞いでいます。

 格天井といえばこの神社の方が正統なのでしょうけれど
厚木の家では格式は重視せず、

あえて構造材を見せ、正統を外しています。

天井が光ることで
構造材が民家の木組みのように強調されています。

 

直接竹に光が当たる画像を探してみました。

この写真は奥の天井にわずかに
右のトップライトからの光を受けています。

床はたたみですが竹や木、植物などで
見事にエイジアンテイストのインテリアを
クライアントは創っています。

背後は隠し階段。

京都の町屋や
地方の伝統的建築物の保存地区をめぐってみると
「ここは押入れかな」と思い襖を開けると階段が現れ
2階に続くしつらえを多く見かけます。

厚木同様、北鎌倉古民家ミュージアムや
鎌倉二階堂の家など現代でも試みていますが
入り口の戸を閉めている限り押入にしか見えないので
階段の所在を隠し、
2階の寝室の安全を確保する事が
そもそもの目的だったとも考えられます。

 

リビングルームの一部を見ています。

画像の左下には今まで見てきた座敷があります。

このように座敷の上に、明り取りの格子窓がありますが
そこからの明かりでは陰影が強すぎるので
中間に天窓(トップライト)を設けています。

観葉植物の置かれている部分の下はトイレである、、
と分かるのは、
上からの光がまぶしいトイレの中に入ったときです。

 

前回画像を少し引いて撮影してみました。

天窓や、座敷の位置関係が理解しやすいと思います。

 

この角度の画像は3枚目ですが
好きな画像なので詳しく説明したくなります。

前回よりも更に引いて移しているので
スペース全体を把握しやすいのではと思います。

左のガラス部分の向こう側は玄関ホールとなります。

前回の画像ですと
このガラス部分(ポリカーボネート複層パネル)が見えず、
かなり暗いのではと感じた方もいらっしゃるでしょう。

実際はこのようになっています。

 

前回画像右端と連続する方向を眺めています。

ワインレッドのペレットストーブやキッチン。

キッチン反対側はカウンターで手前まで伸びて
テーブルになっています。

奥は外のベランダで、
食事の場を気軽に外へと移動でき
キッチンを取り巻いて
個性的でアットホームな雰囲気を出しています。

 

梁から下の部分を白壁にして
光を反射させている様子がはっきりしている画像です。

左側南からはベランダの光が
また右側北からは玄関ホールからの光が入ってきます。

 

前回画像右手の玄関方向からの光が
どのように手前のリビングに入ってくるのか、
状況を今回はご覧いただけると思います。

北側上部からの落ち着いた光で
全体がギャラリーの雰囲気を漂わせています。

突き当たり奥が玄関ホールで
厚木の家最初のころの画像に戻ります。

 

最後の画像となりますが
前回画像の突き当たりの子扉に注目しました。

これは大型の郵便や宅配品のための扉。

スイスのオーストリアに近いグアルダの木造古民家を訪ねると
上半分だけ開く入り口ドアを見かけますが
これは全部あけると
放牧の羊が中に入ってきてしまうためとのこと。
なにか共通した物語がここにはあります。

そういえば厚木の家は全体としても物語のある家です。

それに一役買っているのが室内に塗られた、べんがら。

べんがらを使う家は多いのですが
理由としては内部がすべて白い室内とは異なり
物語が生まれやすい部分にあると思います。

白と黒や赤との対比によって、
強調するところと弱い部分とがいわば層の重なり、
次元の点在、レイヤーの重なり、
に近い状況を生み出すせいか
狭い空間にさえ奥行きが出てきます。

何かちょっと難しい表現になってしまいましたが
近ずくと木の木目が浮き出ていたり、
磨けばつやが出るし、
べんがらは個々の建築主の居心地の良い空間の表現とつながって、
まだまだ魅力は増えてゆきそうです。

 

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