新築住宅

神奈川鎌倉A邸 (2015年竣工)

 

今日からは鎌倉の家を紹介します。

藤本が35歳の時に設計した住宅で施主は育ちました。

30年を経たその家は閑静な鎌倉の谷戸にあり、

楽器をこよなく愛するご両親、という家庭環境でした。

そのせいかテーマとして与えられたのは

「五感を育む住まい」

結婚して今度はご自分たちに授かった

小さな命を育むすまいです。

 

前回と異なり

造園前の画像です。

1階開口部をすべて開け放っていましたが

今回は閉じた状態です。

2階のガラスは谷戸の緑を眺めるための窓

その下壁にうっすらと切り込み線が入ってますが

そこが窓で、外に倒すタイプ。

ここから

通気と、外の音を聞きます。

いずれの窓も五感を意識しています。

 

奥隣りの家と手前の家とは一つの敷地でした。

新築後もお隣と壁面線があって、庭のスペースも連続し

道路と一体となり、広々とした空間が続きます。

 

鎌倉らしい細い道をたどってここまでたどり着く車は

ほぼ無く、庭の延長、遊び場として使えます。

屋内の土間モルタル⇒軒下の砂利⇒庭の芝生といった具合に

建物と庭との関係も素足で行き来できるような

五感を刺激する素材で仕上がっています。

 

今回は室内側から庭と、道路を見ています。

右手が玄関土間、

左側が居間の延長としての土間になります。

 

ベンガラ塗の軒裏の出は1.3メートルほどあり

室内側を守り、夏の太陽からも守ります。

 

このように左手のサッシは片側に寄せ、右手の

玄関戸を右端の戸袋に引き込めば、

土間は外部に対し開いた舞台、

あるいは鎌倉らしいお店の空間に

変貌、も可能です。

 

前回は軒の出について触れました。

今日も軒の話です。

どうやって軒を支えているのか

今回の画像で説明します。

建物幅(約5.4m)の出し桁を両端部の腕木

と中央の丸柱とで支えています。

中央を柱で支えなくとも、両端部と同じように

腕木で支えればよいのですが、

あえて柱を使っているのには理由があります。

ここが玄関ポーチにあたるので

それを表すシンボルとして、まず外部床を一段上げ

そしてこの柱を加えて、その意味を持たせています。

画像は玄関戸や土間のサッシを閉めた状態で

撮影しています。

前回や前々回ブログを参照いただければ

開放度の比較ができると思います。

 

ブログ194と同じような写真です。

アングルは玄関からで、道路からのアプローチを

屋内から見ています。

ポーチの柱が見えていて軒が

1本の柱で、あたかも支えられているような

様子が現われています。

また小さな子供が道路で遊ぶ様子を

安心して見れるくらい、前の道路に車の通行がありません。

人の通りも少なく静かな環境です。

手前の土間と玄関ポーチの床面とは段差があります。

後程説明いたしますが

この段差も五感と関連してこの家のテーマになっています。

 

前回写真撮影位置から

反対側を振り返った画像です。

ここで靴を脱ぎ、板張りの床に上がり

廊下の突き当り、扉を開ければキッチンに続きます

中央は下足の収納。

取っ手は幅木と同じアルミアングル、

この辺は以前の「わびさび庵」と同じです。

また

上部は階段の裏側部分で

右側の土間空間との境を意味します。

扉もあり、小口が見えています。

 

前回よりも土間リビング側に入って

奥を見ています。

 

階段壁に沿って建具が壁のごとく

納まっています。

奥に和室らしき部屋の一部が見えます。

さらに奥には庭もありそうですね!

 

 ただひたすら美しいと思います。

たかが下足入れではあるが。

取っ手はアルミ幅木の転用

 

幅木は白壁の足元に回してあります。

 

 

白壁はコバウというクラック防止壁紙の下地に

フェザーフィール(プラネットジャパン)

を塗っています。

クロス屋さんの下地壁紙張りが大変素晴らしく

フェザーフィールは建築主の自主工事ですが

見事に仕上がっています。

 

右に前回のシューズクロゼット

突き当りはキッチンヘの入り口

左手奥のドアはトイレの引き戸

 

床はマルホンの床暖対応オーク材

 

ここは

 

玄関ではありますが、直接キッチンにも入れるので

 

勝手口的役割もしています。

 

ブログ196のごとく

 

お客さんは右手の土間の引き戸を開けて

 

からリビングに上がります。

 

シューズクロゼットが階段下にあるといっても

正面から見た画像ばかりでは

おわかり難かったかもしれません。

今回は階段が上に上がってゆく斜めの壁と

フローリングの床に階段の一段目が顔を見せているので

それを繋げると何となく上がってゆく方向を想像できるかもしれません。

正面の大戸を左に引くと玄関スペースと遮断された

土間になります。

玄関の奥まったスペースは、ゆとりがあるので

自転車や乳母車のパーキングスペースとしても使えます

 

ブログ198は正面にキッチン入口を見た画像でしたが

今回はキッチン側から玄関方向を見ています。

キッチン入口引き戸は右側の壁の中に収まり

白木の小口が見えています。

その向こうはトイレの扉。

トイレに入る際は

キッチンの扉を閉めます。

左側は階段の姿がうっすら写っています。

手すりの支えも込栓でやってますね。

 

前回の画像、左手におぼろげに

階段が見えていました。

実際はこのようにトイレと土間側の壁とで挟まれた

スペースに配されています。

足の踏む板は桧、蹴込み板は杉、

床の延長として考えベンガラ塗りではなく

白木のままです。

右の明るい壁は玄関へ

左側は土間から更に外部へと続きます。

 

前回の写真よりも土間側に回り込んで撮影しています。

これで階段の廻りをぐるっと一周。

写真でですが

インテリアの体験ができたのでは!

撮影位置はダイニングで

オーク材の床には暖房が施され

上部は吹き抜けています。

2階床の反射光を受けているのは古建具の欄間で

手すりも兼ねています。

 

次回はキッチン側からの写真を見てもらいます。

 

キッチン側から見たダイニングの写真です。

前回、「古欄間が光に反射している」

としましたが、おわかり難かったと思います。

これだと階段もはっきり見え

2階のスペースとの関係性がはっきりしてきます。

 

屋根は切り妻形で、

屋根面も床の反射光を受け、黒に近かったベンガラも

紫に輝いています。

 

前回の写真撮影位置とほぼ同じところで写した

これは、建て方時の画像です。

青空が見えるこの時期の姿も美しい!といつも思います。

魚の背骨のように通っている棟木を1本の柱が支えている写真です。

これからどのように変化してゆくのか

前回の写真からも分かりますがもう少し

角度をかえて写したものを次回ご覧いただきます。

 

前回の写真と比べれば

棟持ち柱が無く、棟木もない画像です。

屋根面、2階床面、1階床面

をシンプルに撮りました。

 

濃い紫のベンガラが光を受けて

自らを得ています。

 

右手に玄関に続く土間

左手は和室と2階は寝室が位置します。

右手が南に当たり

午前中は右側の光が強い。

椅子に近い光は昼ごろこの位置を照らします。

もっとも季節によって違いますが。

 

これから建てようとするお施主さんには

実際の建物を見てもらい光と陰影の感覚を味わってもらいます。

 

前回よりも左側に視点を変えました。

 

一部しか見えなかった和室

やその上の個室、この上下二部屋のみ

が個室として閉じることができます。

 

その他は部屋としてオープンです。

楽器の間として使われたり、読書のために、

など、自由な使い方ができ、家族の動く音

生活する音を感じることもできます。

 

今回は

ブログ208と同じような画像です。

違いは、和室の建具「障子」を手前に集めています。

この様にすると、突き当りの壁が左右に広がる様子や

床仕上げの違い、床段差の違いが見て取れます。

畳床の和室が一番高く

オーク材のダイニングがその次、

モルタルの土間が一番低い位置にあります。

が更に芝生の庭へと続くわけです。

 

和室は一番北側にありますが、炬燵に座っていると

南側の土間や、庭の様子も分かり

奥まっていながら直接、日もさすという不思議な空間です。

季節によってどこまで日が入り込むか、

視覚を楽しめますね。

 

実際、和室から、道路までの空間がどのように変化するか

を見たのが今回の写真です。

手前は和室の畳床、そしてオーク材のダイニング、モルタルの土間

芝生の庭からさらに道路へと続いています。

(写真の最奥に見える壁は道路向こうのお宅)

 

畳床の和室、前回と反対側を見ています。

隣家の樹木を借景として、いただいています。

天井のベンガラとともに、窓上部分の下がり壁も

陰影の制御に貢献しています。

 

モダンな天井まで目いっぱいの窓もいいですが

緑を額縁のように見せる、プロポーションの美しい

この様な窓もありです。

 

 

さて今回の写真です。

トンネルのようなすまいですと

両端部の部屋はともかく

手前中央部のダイニングルームは暗くなりがちです。

写真の正面(南東)からは午前中の日差し、逆の面(北西)からは

午後3時以降夕方まで和室側の直射光がバウンドして入る。

また昼間は吹き抜けの2階窓(右上のブリッジ側)から入るので、

中央部ダイニングは終日、明るく、光の移ろいを感じます。

 

前回とほぼ同じ位置の写真です。

ただ2階床のレベルで撮っています。

三角の窓や大屋根に包まれた2階スペースの様子が

眺められ、細かなところ、例えば

手すりの古欄間など、その取り付け位置が

上下して

右のブリッジと奥の部屋に配されていること

なども分かります。

古欄間はあらかじめ購入しておいたものを

使用していますが、まさに適材適所

この手すりのために生きながらえてきた感があります。

 

昨日の写真で

右側に見えていたブリッジを

1階から見上げています。

日が南西側に回るときは

このように

屋根面の垂木が浮き上がってくる瞬間でもあります。

ブリッジは1本の梁と、渡りアゴで梁に組まれた

根太パネルとで構成されています。

 その様子をデザイン上際立たせる目的で

ブリッジの裏面はベンガラ塗装を省いています。

 

2階の写真です。

白壁の一部は建具として開閉し

外部の音や通風を得ています。

 

屋根面と接する三角の窓部分は開かず

外の景色が見えます。

人の背丈から上に位置しているので

隣家の窓と向き合うのではなく

斜め上方の

近くの山を眺める高さになっています。

 

ここは特に決めた用途の空間ではなく

ゆとりのスペースです。

ただ五感を育むことがこの家のビジョンですので

景色や内外の音を感じ、楽器を楽しんだり、風に触れたりするでしょう。

居間として、また

読書のスペース、あるいは、光の移ろいを楽しむ、

夜の月光を愛でる場所など、多用途に使います。

 

採光と景色のための三角窓と、

通風と外部の音のための、壁と同化した窓、

 

前回と異なり、おのおのを

正面に近い角度で見ています。

この写真の方が

階段との関連もおわかりやすいかな。

手摺りも見えますしね。

 

32年前に設計させていただいた家で育ち、成人し、独立後

結婚なさった、ご長男のすまいです。

 

前回の設計でもご両親はピアノとチェロをなさっていたので

リビングも音響環境に考慮しました。

今回はそれに加え、開口部のあり方に一歩踏み込み

機能別の窓にした訳ですが

はたして

「五感を育むすまい」に近づけたか?

 

よちよち歩きのお子さんの

20年後を楽しみにしています。

 

階段部分の手すりを真横から見ています。

 

奥に見える古欄間利用の手すりと同様に

細い線状の木材と、帯状のパネルとを組み合わせ

簡素でモダンな美を表現します。

 

左には北側にわたる橋の一端が見えています。

 

前回の南東側同様、

北西側にも三角窓があります。

白壁の窓は、開いているのか、締まっているのか

この様な光の当たり具合では

曇りガラスや障子のようにも見え不思議な感じです。

季節によってはここから夕日が差しますし

三角窓からは

「星とか月とかきれい」だそうです。

それを感じるゆとりがある、

現代的な風流のあり方かもしれません。

 

左手奥にブログ218の不思議な窓

右手前にブログ217の階段手すり

各々を繋げる写真です。

ブリッジが双方を繋げています。

 

2階の床はJパネルで36ミリの厚さ。

手前のごとく、手摺りに囲まれた舞台のようなスペースが3つあります。

 

右奥の障子の部屋のみ囲まれています。

あとは開放的なスペースですが、お子さんの成長とともに

様々変化してゆくでしょう。

 

前回の写真は床から1メートルの高さで撮っていました。

今回はそれより60センチほど高い位置の画像です。

この高さですと、左手の三角窓から南側の山と隣家の

屋根あたりが見えます。

直接お隣の窓と対面しない様子が分かるかもしれません。

 

向こうの「ステージ」に見えるのはご主人のエレキギター。

 

前回画像撮影位置はそのままで

右手を望んだ写真です。

広々していますが

1階と2階あわせて23坪。

(吹き抜けは除いてますが)

家全体がおおきめの茶室、

といった親密さを感じさせています。

そのせいか心を落ち着かせ

自らを深く顧み、エネルギーを充電する禅であり

鎌倉武士の質実剛健さであり

わびさびであり、五感であり、

と、いろいろ詰まっている小さな宇宙です。

 

階段を見下ろした写真です。

左側の手すりはやがてブリッジに至り

「向こう岸」へとつながります。

手摺りの角材だけはべんがらを塗装せず

オスモでアクセントをつけます。

 

前回のブログでブリッジといっても

わかり難いと思い

今回の写真を出します。

 

吹き抜けを横断する橋で

南東側と北西側のゾーンとを結んでいます。

昼近い時刻の撮影ですので

ちょうど南側からの日差しが強く入ってきています。

 

個室内部の写真です。

腰壁は吹き抜け廻りの手すりと同様のデザイン

として、白壁で埋めています。

その上の障子をあけると吹き抜けとなります。

屋根裏との境にはガラスをはめ、

ひとつ屋根の下で住まうイメージを強調しています。

 

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