増改修住宅

神奈川三浦A邸 (2015年竣工)

今まであった建物に手を加えて2世帯が住めるようにリフォームしています。

春には鶯や不如帰の鳴く小高い山々に囲まれながらも海に近く、美しい富士山を望みます。

この地のリフォームにあたって、今ある環境を満喫できる住まいとしました。

今回の写真はそのアプローチです。

べんがらの格子で南庭を隠しトンネル状の路地を玄関へと向かうのですが、奥に見えているのは逆の入口部です。

このトンネル、既存のバルコニーの下を利用しており天井はその簀子板、格子の黒い影の部分はバルコニーを支える柱です。

隠れ家的なアプローチですね。

 

 

入口を見返していたのが前回写真ですが

同じ位置に立って左に90度の方角がこの写真です。

つまり正面の玄関に至るには、入口から格子で囲まれたアプローチを直角に回り込む。

すると突き当りにあります。

 

ステンドガラスが嵌め込まれたドアはべんがら塗装ですが右手のべんがら壁も塗装は芸術家の施主の作品です。

 

正面左手は明るくなっていますが

実は一気に庭が広がっています。

狭いところを歩かせるのはその開放感を強調する意味もあるのです。

ちょうど茶室の躙り口のように狭いところから入らせて低めの天井を高く見せるところに通じますね。

 

写真は玄関のドアを開けて中から

歩いてきた路地を見返しています。

 

ここは以前、土間で吹きさらしの半戸外スペースでした

リフォームなので不思議な角度がこの玄関にはついています。

既存の建物が直角ではなくカタカナのハの字型に開いていて

今回それを利用しているところが要所に出てきます。

玄関の壁も!実は左右平行ではありません。

パースついちゃってますけど。

 

右のべんがら格子戸はクロゼット入口です。

 

今回の写真は玄関扉を開けたところです。

杉の床板を張る向きは左の格子戸に合わせ平行に

していますが、よく見ると

右側の壁とぶつかるところでは平行になっておらず

左右の壁がハの字に開いている様子がわかります。

既存の建物が平行でなかったために起こる、

リフォームならではのハプニングです。

奥と手前では部屋の幅が違う。

つまり奥に立つとさらに狭まさに縛られるのですが

実は格子戸を開けた時、天井を取り払ったリビングの解放感に

浸れる効果を出しています。

 

手前の式台は旧家屋で使われていたものの再利用。

土間は狭さを克服するため、左のシューズクロゼットまで

つなげています。

 

さて玄関格子戸をあけて広がる空間です。

 

以前壁のあったところは右に立つ柱までで

そこから左は増築し庭に続けています。

増築部は、大梁に垂木を乗せ

昔の縁側のように屋根裏を見せてべんがらを塗っています。

 

べんがらを塗ると木材の色違いが統一される、防腐、防虫作用がある、古色が生まれ

色に深みが出る、磨くと艶が出て木目が浮き上がる、そして独特の陰影を醸し出す、

などの特色があります。

 

リフォームにあたって右手の柱は当初から残すつもりでした。

理由は玄関格子戸をあけても、まだ居間に完全に入っていない、

ここはまだ廊下部分、いわば結界として象徴の意味を持たせています。

 

手前の柱は、前回コメントした既存の柱です。

但し若干増築した部分の柱と2本抱合せて

いるため手前にボルトの穴がみえます。

縦長の穴は既存壁の貫穴ですが、これらを隠すことではなく

そのままにして新しいところと古いところとを明確にします。

前回の画像でこの柱を裏側から見ますと、

タイル床との境目にもボルトの緊結穴が見えてます。

奥の明るいところが玄関で右奥が前々回に見てきた玄関入口

と続きます。

 

 

前回142ブログ写真位置から

少し下がってみた画像です。

2階に上がる階段の1段目はこのように

タイルで仕上げた、

暖炉のステージになっており

後ろの壁とワンセットでデザインしています。

 

ここにも既存の壁のずれが生じており、

暖炉の壁は背後の壁の角度に合わせています。

つまり暖炉ステージ先端のラインとは平行でなく

ハの字に開き、景色に動きを与えています。

玄関から入ってきたときの広がりを強調する事にもなり

茶道における「角違い」の美意識さえ感じます。

 

暖炉の壁上部には以前の家で使用した

バリの屏風を分解し、再利用しています。

今後の紹介で、またどこかに登場するでしょう。

 

 

前回から2週間近くPCトラブルで空いてしまいました。

久しぶりのブログです。

今回は前回の撮影位置から少し後退してみました。

今回のリフォームで屋根の梁組が表れていますが

これは、天井高を確保する、構造材を見せ家の骨格を表し、

力に対し部材の踏ん張る様子を見せる目的があります。

今回は屋根組全体は見せず

天井を張り断熱改修を行っています。

 

 

50年の歴史を持つ住宅のリフォームです。

 

右手の障子は物置に仕舞い込んでいたものを

再利用。

新たに濃紫べんがらを塗ってほかの木部(暖炉の後ろは

木ではなくケイ酸カルシュウム板)と

色を合わせています。

 

暖炉上の欄間はバリ風でこれだけは元の色のままにして

インテリアのポイントにしています。

以前は欄間ではなく屏風でした。

屏風とは「片瀬山の家」の9番目の画像中央がそれです。

いくつかに分けて使用していますのでこれからもどこかに出てきます。

 

庭には玄関へのアプローチで説明した竪格子が見えます。

べんがら、障子、木の素材感、外の庭や格子の路地など

「旅館のような住宅」になってきます。

 

 

今までは暖炉のある側を見てきました。

今回は反対側の様子です。

既存の梁組の一部が白壁の中に浅く、また深く入る。

丸太のなだらかな曲線と柱や垂木などの直線とが

白壁にからみ

その白壁も左手、南の光を受ける面と

右手、東の光を受ける面とで

陰影のグランデーションをつくります。

既存の間取りや構造体をうまく利用し、

リフォームすると思わぬ美しさが出るものです。

 

昨日の白壁が右手に見えています。

正面の障子のある方向が南になります

つまり暖炉側が東、床の間風が西。

そして床と天井は杉板。

 

 

前回の反対側の写真です。

正面はキッチンで大工さんと建具屋さんの合作です。

扉はべんがら、白木、ガラスと素材を変えて家具のイメージを強調します。

天井は屋根の勾配をそのまま現しています。

正面が北、右側が東、キッチンには早朝から朝日が当たります。

白壁部分はモダンな印象ですが、天井や梁組はべんがらで塗装し

和のイメージに。

 

 

今回の写真からはべんがらを塗る前と塗った後の比較ができます。

奥のキッチン周りの家具がそれです。

ぜひ前回と比較してみてください。

手前の照明を抑えていますので、

暖炉の火が、それに階段が浮き上がり

二階への期待も胸,膨らみます。

 

 

今回の写真は

前回と比べ天井部分を大きく写しています。

 

キッチンの様子も少しわかりますが

キッチンの紹介は次回以降として、

べんがらの効果について考えてみます。

 

木材は種類によって色が違います。

それぞれの味わいを活かし、そのまま自然の状態を楽しむ方向と

塗装することで、雑然とした色の違いを統一し壁の白と対比させて

モダンな印象にする方向とがあります。

 

写真の中には家具の一部の扉や階段、床など白木のままに

しているところもありますが、色の分量をコントロールするため

強調したい部分はべんがらを塗らず白木を残しています。

前回の画像と今回とではキッチンの扉の塗装が異なりますが

現場で検討しべんがら塗装を追加することで、部屋の重心を下げ

落ち着きのある空間へとコントロールしています。

 

 

キッチンを階段から俯瞰してみました。

べんがらと白木のコンビネーションについて

前回は話しました。

それにタイルの色が加わってきます。

カウンター上はグレー系で明るい配色、逆に

壁は黒に近くべんがらに近づけ、馴染ませます。

金属の素材感と相性も良い。

またべんがらの建具には

白木の溝引手脇に黒竹が添えられています。

もっと近づかないと見えないかな?

 

 

コの字型キッチンの入り隅はステンレスではなく

タイルで仕上げています。

キッチンカウンターは通常ステンレス一体型で作るでしょう、

けれどもコストダウンや搬入を考え3分割としています。

結果的にタイル貼は金属の冷たいイメージを離れ

暖かな素材感を生み出していますね。

 

 

キッチンの東側を見た写真です。

横長のハイサイドライトが効いていて キッチン内を自然の光で明るくしています。

手前のカウンターに一部おむすび型の出っ張りがありますが ここに浄水器が来ます。

シンクと同じレベルに置くのですが背丈があるので このように一部上に飛び出しています。

浄水器の高さにカウンターを合わせると ダイニング側が見えづらく、作業時の居心地が良いとは言えません。

おむすびカウンターの上には 観葉植物や盆栽などを置いてもいいでしょう。

 

 

今回はキッチン外部への出入り口をアップしました。

壁と床の境目に幅木にはアルミ製のアングルを使います。

写真のように幅木が引っ込むので

壁と床が透いて見える納まりになります。

和風の建物でもこのアルミアングルをつかい

幅木も現代の数寄屋に近づけます。

 

 

それでは2階へと向かいましょう。

ご覧のとおり階段の1段目は暖炉のステージになっています。

ステージのタイルは滑りにくいものを選択していますが

2段目から上の木製部分には竹の滑り止めを入れています。

 

この欄間(正確には衝立であったものの一部)

で、いまは手すりの落下防止アイテムとして利用されています。

それにしても暖炉の煙突

どこまで伸びてゆくのでしょう?

む!何か奥にもバリの衝立!

今度は目隠しスクリーンとしての利用です。

 

 

6枚立てのバリの衝立。

それをばらし、一枚一枚適材適所に使用。

前回は階段に、そして今回は洗面化粧室に使用、の紹介です。

吹き抜けへの落下防止のために取り付けています。

吹き抜け側から見た前回の写真でその様子がわかるかもしれません。

 

 

今回はブログ156の撮影位置から右に回り込んで

吹き抜けと暖炉、洗面化粧室のバリ風格子を見ています。

また庭との位置関係や壁のずれ

も分かります。壁のずれについては

次回はよりわかりやすい画像を出します

 

吹き抜けを上から見下すと、写真のようになっています。

1階平屋部の天井を外し、上部の空間をたっぷりとるリフォーム計画。

既存の部分を有効利用することで思わぬ空間が現われます。

ここでは壁の角度が平行でないところが現われて、

できたスペースに暖炉を置くことができ

また例のバリ風の衝立をはめ込むスペースも生まれたわけです。

 

ブログ157のバリ風衝立を洗面化粧室内部から

見ています。

奥に階段室、左に吹き抜けと続き、

前回の煙突は左手に見えることになります。

 

部屋の出入り口には古建具を使用。

左はバリのもの、右は日本、と国は違っても

べんがらの空間に違和感はありません

 

 

前回ブログでは右隅に少ししか見えなかった古建具。

廊下から吹き抜け階段側を見たこの画像に写っています。

 

よく見ると帯板の透かし模様がバリの衝立模様と合い

深みのある味わいを醸し出しています。

バリと和は呼応する特質がありそうですね。

 

煙突の向こうの窓からは天井を取り払った平屋部の屋根が見えます。

オレンジ色の瓦屋根です!

 

 

前回お話しした窓は

白く飛んでしまっていたので

瓦屋根を見やすく写した画像です。

 

ここからは夕日が入り階段部分や暖炉の壁を明るく照らします。

オレンジ色の夕日の輝きは、次第に衰えてゆく、

一方、手前の暖炉の火は明るさを増してくる、

冬はそんな夕暮れの光景を楽しめるでしょう。

 

 

洗面化粧室から廊下の部分は

天井の低いところを通ります。

突き当りの明るい部屋が画室です。

 

今回の改修工事では既存の2階も天井を外し

上部に吹き抜けているので

このトンネルのような廊下をぬけて画質にたどり着くと

広々と感じます。

廊下の上部にみえる空洞は小屋裏物置に

ストーブの暖気を送るためのものです。

 

2階の一部の画像です。

柱が不思議な位置に出てくる

そんな面白さが改修工事の場合、出てきます。

 

数寄屋造りの家や農家、昭和の家などの多くが

柱が直接室内に見える真壁造で出来ていました。

すべて見えてこなくとも、このようにシンボリックに

柱を出せば

べんがら塗の天井と白壁、とのコントラストで

 モダンな印象を得ます。
 

改修したのは昭和の家なので、どの柱を残し

他は隠すのかがデザインのポイントになります。

感覚的なもの、ではあるが落ち着きや居心地の良さに

影響してきます。

 

 

他の部屋も天井を外すと

東の部屋に西日が入る、などということも起こります。

既存の構造部材、火打ち梁や筋違なども現れる、

これも改修工事ならではのこと。

改修前、ここはキッチンでしたが

今回は個室として使用。

ここにもバリの衝立を流用しています。

南側の光が

べんがらの天井を浮き上がらせています。

灰炭にほんのわずか赤のべんがらを加えるだけで

このように真黒ではなく濃い紫になります。

本来のべんがらの色ではありませんが

べんがらを混入しなければこの味わいは出ませんので

ついつい、ベンガラ!としています。

 

個室の入り口。

以前どこかで使われていたものを購入したのですが ドア幅が60センチを切っており狭い入口に使用していたようです。

ステンドグラスのデザインをよく見ると半月のカーブが何となく不自然にも感じます。

以前は2枚が対になる両開きのドアではなかったか? とおもい当時の資料を取り出すと、
解説には両開きのコメントはありませんが、購入当時の画像には 右側のドア枠縁にそって定規縁(両開き戸の中央の隙間を隠す 幅25ミリほどの細長い木片、戸当たりにもなる)があるではありませんか!

両開きに間違いありません。
(さらにコメントがあり、イギリスの蚤の市で見つけた1930年頃のもの?!)

 

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